ハヌマン・ドーカ
Hanuman Dhoka
王宮を「建物」ではなく、門・中庭・塔が連なる政治空間として読む。最初の手がかりは、朱に覆われた門番ハヌマーンだ。
王宮の入口に、忠誠の神が立つ
カトマンズ旧王宮の入口を守るのは、赤い布と朱色の顔料に包まれた猿神ハヌマーン像。像が置かれた17世紀後半から「ハヌマーンの門」を意味する名で呼ばれるようになった。素顔が見えないほど塗り重ねられた朱は、古びた装飾ではなく、今も信仰が続いている証拠だ。
門を抜けるとネイザル・チョークをはじめ複数の中庭が連なり、マッラ王朝、シャハ王朝、近代国家へと権力の舞台が移った道筋が見えてくる。外のダルバール広場だけで帰ると、この場所の半分しか見ていない。木彫窓、石像、増改築された棟の違いを追うと、王宮が一度に完成した建物でないことが分かる。
修復中の宮殿をどう歩くか
2015年地震後は棟ごとに修復・公開状況が異なる。見学当日はハヌマン・ドーカ博物館の公式案内と入口掲示を確認し、閉鎖区画へ入らないこと。足場が残る場所では、失われた装飾を新材で補う職人仕事も見どころになる。博物館に入れる日は、王宮の生活用品と儀礼空間を続けて見ると理解が深い。
おすすめは朝、クマリ・バハルから広場を横切って門へ入り、ネイザル・チョーク、ローハン・チョークへ進む順。正午前後は団体が重なりやすい。寺院の扉、祭壇、礼拝者へカメラを向ける前には一呼吸置き、係員の指示を優先したい。世界遺産は背景ではなく、住民が使う王宮と聖域の複合体である。