パルピン
Pharping
ひとつの寺を見る場所ではなく、洞窟・僧院・村の生活が重なる巡礼地。パドマサンバヴァの伝承を手がかりに歩くと、カトマンズ盆地南縁の宗教地理が立ち上がる。
二つの洞窟を軸に見る
パルピンで中心になるのは、チベット仏教でグル・リンポチェと呼ばれるパドマサンバヴァに結び付くアスラ洞窟とヤンレショ洞窟だ。ここで修行し成就を得たという話は信仰上の伝承であり、考古学的な確定事項とは分けて受け止めたい。そのうえで、岩窟に灯るバターランプ、壁面の像、五色の祈祷旗を目にすると、今も祈りが続く場所であることはよく分かる。
洞窟だけを往復するより、丘に点在するニンマ派など複数系統の僧院と、ネワールの町並みをつなぐと面白い。近くのダクシンカリ寺院はヒンドゥー教の女神信仰の場で、短い距離に異なる信仰圏が並ぶのもパルピンらしさだ。
静けさを借りるつもりで歩く
洞窟は観光用セットではなく修行の場だ。入口で帽子を取り、読経中は私語と撮影を控える。内部は狭く、参拝者が五体投地をしていることもあるので動線を塞がない。供物や自生したと信じられている像には触れず、撮影可否はその場の僧侶や表示に従う。
カトマンズ中心部から道路事情によって所要時間が大きく変わるため、半日を詰め込みすぎない。石段は雨季に滑りやすく、夕方は道が暗い。歩きやすい靴と羽織り物を用意し、帰路の車を先に確保しておくと、祈りの空気を急かさずに過ごせる。